アルク出版企画・代表の加納亜美子です。
これまで数多くの出版に関する相談を受けてきましたが、その中でも非常に多いのが以下のご相談です。
出版社から『出版しませんか?』という連絡が来たんだけれど、
どうしたらよいと思いますか?
このメールの内容をよくよく聞いていくと・・・
「これは自費出版だな」
と思うケースが多々あります。
まず、結論!
自費出版とは、「自分で全ての費用を負担して出版する方法」です。
どの出版方法も、メリット・デメリットがありますが、私は、もしあなたがまだ1冊も出版をしていない、かつ今後商業出版したいという思いがあるのであれば、「絶対に商業出版にすべき」と考えています。
今回は、「なぜ自費出版してはいけないのか?」という理由について、3つの観点からご紹介したいと思います。
自費出版と商業出版の違い① 費用について
基本的に、書店流通させる品質で紙の本を作るためには、おおよそ300万円~500万円ほどの費用がかかります。
ざっくりとした概算ですが、初版部数が5,000部なら費用は500万円程度の、1万部なら1,000万円程度と思っていただけたらと思います。
最近では、よっぽど「売れる」と判断された著者でない限り、初版で1万部はかなり珍しいでしょう。通常、だいたい3,000~5,000部というのが多いため、300~500万円が制作費用となります。
仮に出版に掛かる費用が300万円だとして、
・著者が費用を負担するのが、自費出版
・出版社が費用を負担するのが、商業出版
です。
商業出版の場合は、出版社があなたの企画に出版費用を全額投資してくれます。さらに、印税を得られます。
一方で、自費出版は、上述したコストを負担する必要があり、非常に大きな負担をする必要があります。
そのため、自費出版は極めて費用負担が大きい出版方法だといえます。
商業出版と自費出版の違い② 流通方法について
2つめの流通方法に関してですが、商業出版の場合、出版社が全国の書店や図書館に営業して流通させてくれます。
書店はこの20年で約半分まで業界が縮小しているといわれていますが、それでも日本全国に1万店舗以上あります。仮に全国の書店に1冊ずつ配本されてそれが売れたら、1万部売れるわけです。
実際はなかなかそういうことはないですが、それでも「書店で本を流通させる」ということは、著書があなたの代わりにあなた自身やサービスをPRしてくれる「営業部隊」になってくれるのです。
その結果、著書が新しい顧客を引き寄せてくれます。
一方で、自費出版の場合は、書店流通は基本的に行われません。なぜなら基本的に自費出版で作った本は、著者のあなた自身の在庫となり、自分で販売していく必要があるからです。
自分で売るので、新しい見込み客や仕事との出会いの広がりは、商業出版に比較して、非常に小さいといえます。
費用を大きく負担したのに、流通量が極めて少ない・・・。
新規顧客の獲得や、売上アップを目指している人にとってみると、自費出版は極めてメリットが少ないといえるでしょう。
商業出版と自費出版の違い③ ブランディング価値
私はよく、SNS発信や出版セミナーで「出版で、人生が変わりました」と紹介しています。しかし、自費出版の場合は人生が変わるとか、社会的影響力が高まるとか、そういうことは、ほぼないと言い切れます。
そうした体験ができるのは、新しい出会いが見込める商業出版だからこその特徴です。
起業家やセミナー講師、弁護士や税理士などの士業の方々には、何冊も自費出版をしている方がいらっしゃいます。確かに、「自分の考え」や「書きたいことを書く」には、自費出版は良い方法だと思います。同様に、社史やエッセイ、自分の考えを主張したい場合にも適した出版方法です。
しかし、会社としてのブランド価値の向上、作家という肩書を名乗る、新規顧客の獲得などには、ほとんど役に立たないでしょう。
だからこそ、出版方法の違いを知ることはとても重要なことなのです。
本来「商業出版」で得られるような新たな顧客の獲得や、認知度の向上を自費出版で求めてしまうと、そうした結果に結びつかせることはかなり難しいといえます。
さらに、自費出版をすることにより「この人は商業出版ができないから、自費出版を選んだんだな」と思われることもあり、ブランド価値を下げてしまう可能性もあります。
詳しくは最後に述べますが、わたしは1冊目の出版を考えるときに、自費出版を行うことはお勧めしません。
特に起業家の方々にはぜひ商業出版にチャレンジしていただきたいと思っています。
本を生み出すための時間はかかりますが、それでも商業出版は、あなたの人生やビジネスのステージを大きく飛躍させる貴重な財産になります。
商業出版する方法とは
今回は、自費出版をしてはいけない理由について、ご紹介しました。
最後に、まだ著者の経験がない方に、ぜひ知ってほしいことがあります。
それは、「1冊目の本」は、おそらくあなたが想像している以上に、とてもとても、大切な1冊だということです。
その理由として、自分自身のそれまでに培ってきた、いわば生まれてきてからの数十年分の生きた知識が、すべて最初の1冊に注入されるからです。
1冊目の本は、あなたにとっても特別ですし、身近な人々からも祝福があります。その結果、家族や友人、仕事関係者が何冊もなん十冊も、1冊目は100冊も買ってくれた方もいらっしゃいます。
そうした傾向があるからこそ、実は「初めて本を出す著者」というのは、出版社からみても喜ばれる傾向が非常に強いのです。
むしろ過去に出版経験がある人の場合は、その実績をしっかりリサーチします。
当然ですよね。
商業出版の場合、出版社は出版費用の数百万をあなたに投資して本を出すわけですから、投資する対象となるあなたのことはしっかりと調べます。
もし、その出版社が自費出版事業をしていた場合は、商業出版ではなく自費出版の営業をされることもあります。実際に私は、とある著者さんでそのような経験をしたことを耳にしました。
一度自費出版をしてしまうと、出版社さんには「この著者は自費出版してくれるお客様になってくれるかもしれない」と判断されてしまうのです。
だからこそ、もし今後、紙の本での書店流通ができる商業出版を考えているなら、自費出版にチャレンジすることには、慎重になってほしいのです。
自費出版のデメリットを数多く解説しましたが、私の結論としては、いつか商業出版をしたいと思っているのなら、迷わず商業出版一択です。
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